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草分けに輝く個性

MTBライダーの草分けである檀琢磨さん。
現在は長野県の蓼科近くに遊び心満載の居を構え、
冬の時期はここ最近ハワイで過ごしているという。
山を走り、タウンからノースを自転車で往復、海ではサーフィン、
その日その時に自分自身が一番楽しめることをチョイスしてトレーニングに
充てているという。
この冬の時期をトレーニングのために海外で過ごすのは、
MTBのワールドシリーズを回っていた時から変わらずのことだというが、
以前は南アフリカをあえて過ごしていた時期もあった。
おちおちトレーニングなんかに集中できるのだろうか?
指折りつきの治安の悪い土地でのことだ。

厳しいレースに向き合うストレスを乗り越えるために、あえて
厳しい自然、厳しい社会を選んだという。

わざと自転車をめがけて突進してくる車、
木をなぎ倒した象、ものをなげつけるヒヒなどなど。
容赦なく襲いかかってくる様々な難関。

そのことを懐かしそうに悠然と話してくれているところに、
内田正洋さんも来てくれた。

そこで話しは、今年は中止の発表がされたばかりのパリ〜ダカールラリーの
話しへとおよぶ。そう、内田さんは20年以上も前のこのレースの黎明期に
いち早く日本から参戦していた。

レースの戦いととも、厳しい砂漠という
環境の中で内戦地をかけ抜け、ゲリラに襲われ、
砂だらけになり、時に血を流す。
内田さんは、日本人のパリダカの草分けだが、
もちろん、シーカヤッカーの草分けでもある。

まだ誰も経験していないことを、命をかけて挑むこと、
そんなことに時間を費やしてきただけにしかない野太い個性をもった人間。

本当の個性って、何かをがむしゃらに、命がけでやってきた時に、
はじめて現れてくるその人の持ち味なんだろうな。
まったくスタイルの異なる2人と話しをして、そう思った。

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剣禅一如

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先月、ライアテア島にある古代からの祭殿Maraeに案内してもらった時のこと。
じりじりと照りつける日差しに我慢できずに、甘い汁に溢れたマンゴの木に向かおうと
したら、西アフリカはトーゴ生まれのフランス人で今はライアテア島でガイドを営む
エリック・ペレ氏が突然こう言った。

「ところで、俺は日本刀に興味があるんだ。侍の戦争の道具でもあるのだろうが、
日本刀の道を究めることはとてもピースなものなんだろう」

まさに不意打ちのような問いに、その2週間前の自分ならば、そのまま聞き流していた
かもしれない。が、そのちょうど1週間前に、横浜にある真言宗の寺院で知人を通じて、
紹介いただいた剣士である黒澤雄太さんの言葉が、思いもよらぬところで浮かぶ。

「真剣で斬っている時と、禅を組んでいる時の、自分の心持ちは、まったく同じ。
天空と大地、そこにいる他人とも一体であるような自由自在な境地になるのが、
僕の場合は剣禅一如しているのです」

異国での、ちょっとしたセレンティビティを経て、昨夜その横浜の真言密教の寺院での
道場開きにうかがった。

現世では、必ずしも必要とされていない日本刀だが、真剣を扱い、実際に斬ることの
意義に共感せずにいられなかった。見栄えや型、手っ取り早さに編重し、
本質が抜け落とされがちな今にあって、刀という斬る道具を実際に振り、
斬ることの重要さ。そして、日本人としてのアイデンティティを希求すること。
そんなお話をうかがったが、しかしながら、決して頑なになることもなく、
他の流儀や選択肢にも敬意をもって接している黒澤雄太さんは、本当にやわらかな方だ。

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日本武徳院試斬居合道の道場開きにて。剣士 黒澤雄太 師範による試斬

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大日如来。曼荼羅。鎧兜。

道具

ヘビーデューティーやアメリカンカジュアルに少しでも惹かれたことのある人なら
きっとどこかで目にしているであろう、古き良きアメリカの雰囲気プンプンの
イラストを描く、栂岡一孝さん。フライの竿を振るのを、毎日の日課としている。
何気なく置いたフライフィッシングの道具は、使い込まれつつ手入れがいきとどいて、
味わい深い。

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釣り上げた、最高に旨い(!)鱸をいただいた。ご馳走様でした!

その後に、指笛の練習。
僕だけ、いつまでたっても、息がすっー、すっーと抜けるだけ。
まったく、自分の身体すらどうにもならないものだ。

週末の天気予報が外れて、良い天気になりますように。